第8号:1999/06/10


リレーエッセイ共生(6)

謎多き人物の正体は、、、?!(大塚弘子)


  1歳児半なみの判断力と、4歳児なみの運動能力、時には3歳児なみの反抗期がおとずれ、そして時には好みの異性に対して年相応の恥じらいやアプローチを見せる、その正体は、、、?!
  こんにちは。突然ですけど、小さなお子さんが「あー」とか「だー」とか言いながら満面の笑みを浮かべて、ペコリとおじぎをしてきたら、どうしますか?(ちょっと照れながら)笑顔を返す男性、「あらこんにちは」と、やはり満面の笑みを返すお母さんやお年寄りたち、「こんにちは」とおじぎをする子供達などなど、次々と頭に浮かびます。おそらく多くの人は素通りしないでしょう。ではなぜ多くの人はそのような行動をとるのでしょうか、、、。答は簡単、その子があいさつをしてきたと理解したからです。
  では、全く同じ行動を今度は大人がやってみたらどうでしょうか?私の経験では、4割の人が返事や会釈をし、3割の人はとまどいながら去っていき、残りの3割の人は見ずに素通りしたり、けげんな顔で見ながら逃げていってしまいます。

  さて、謎多き冒頭の人物、実は私の妹です。今年21歳になりましたが、気分は超若くて、、、簡単(?!)にいうと知的障害者です。一言で言ってみても、全員が全員違う状況だから、他の人のことは全く分かりませんけど、妹に関して言えば、言葉は話せませんし、冒頭述べた通りで、強いてつけ加えるならば野生動物なみのすばしっこさも持っているので、わりとやっかいです。
  この一くせも二くせもある妹と、母との日常交わされるバトルはなかなかのもので、私が帰省すると待ってましたとばかりに母は風邪をひきます。無理もありません。晴れた夜には電柱の前でネコバスを待ち、月夜の晩には窓から一晩中空を見上げて大声出したり、ため息ついたり。真冬には冷えた体を暖めようとしたのか、午前3時に水風呂の中で震えていたり、、、母はその度にうとうとしかけた体を起こして、妹を寝かせようとするんですけど、まず寝ません。すぐにチョロリとぬけ出して遊んでいます。つい先日は警察官3名に保護されて帰ってきました。何個もある家のフェンスの鍵をすべて外して(こういう悪知恵はすごい)近所の林でうろうろしていたんですって!本当によく無事だったと思います。
  夜がこの調子だから昼は休んでいるかというとそうでもないです。朝、明け方ようやく眠った妹をたたき起こしてお風呂に入れて、授産施設へ送り出すためバス停に連れていく。まずここまででも十分体力はいりますが、帰ってすぐ洗濯、そうじ、昼ごはんを食べ、買い物をし終わる頃には、もうお迎えの時間です。結局万年睡眠不足です。帰省する度、倒れたくなる訳だ、、、(グスン)たぶん、ここ十数年、母は美容院に行ってません。行けませんよね、これでは。最近は、自分で散髪するのが異常に上手くなってしまって、ちょっと自慢げです。

  こうまで書いてしまうと、すごーくつらい日常ばかりのようですけれど、これがそうでもないんです。もちろん腹は立ちますが、後にそれは笑い話となっている。実におもしろいんですよ。小さい頃には色々嫌な思いもしたけれど、今じゃそんなこと帳消しでおつりがくるくらい、「楽しい妹やろ?」ってな具合で自慢のタネです。
  先に述べたあいさつの風景、あれはまさにフレンドリーな我が妹と買い物に出かけた先でよーくおこることです。相手が子供だったら、あいさつって受け入れられても、中身だけが子供だったら受け入れにくいんですね。
  ふれあったことがない限り、分からない部分はあると思う、けれど、少しだけ想像力を働かせれば分かってくるものだとも思います。そして、想像力を働かせるためには、目をそらさずにきちんと見なくちゃ!想像力と、相手をみてみる気持ちがあれば、手段が欠けていようとも、コミュニケーションなんて案外簡単なものだと思います。  



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